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※「艦これ・闇(激戦!深海の亡霊、闇艦娘との闘い)(一般向け)」公開中です。
 詳細はHP「艦これ、こちら鎮守府第一基地前駐在所」にて



【艦これ】艦隊ウラこれくしょん 高雄型重巡姉妹編
序章:任務【春海提督、はじめての着任! 艦隊の指揮に入られよ!】


 国内屈指の海軍兵学校。
 この学校でトップに入ることは、国内トップであるのと同意である。
 そしてこの学校には、特に抜きんでた才能を持った4人の若者がいた。
 しかしこの4人、あまりにも特出した存在であった為に、正規のエリート出世コースからは外れた道を歩むことになる。
 同時期、軍では秘密裏に極秘中の極秘プロジェクトが始動していた。
 4人の若き軍人は知らなかった。
 この極秘プロジェクトの中心人物として、軍が4人に目をつけていたことを。
 ときは過ぎ、海軍兵学校を卒業する日が訪れた。
 この日をさかいに、4人は数奇なる運命への道を歩むことになる。

 ――――――

 ――――

 ――

 提督――それは艦隊の司令官である。
 艦隊――それは複数の軍艦で編成された海軍の部隊である。

 数ヶ月前のことである。
 海軍兵学校を卒業したばかりの俺は、提督というありえないポストに就けられた。
 異例の若さで提督に抜擢された俺は、この異常すぎる状況に不安を感じていた。
 いや、不安なんて生易しいものではない。
 むしろ恐怖を感じる。
 提督なんていうとんでもないポストに就くということは、艦隊を指揮する司令官、つまりは艦隊のトップに立つということである。
 そうなると俺は部下を持つことになるのだが、俺の部下となる人間は当然のごとく俺なんかよりも超先輩で超優秀な超軍人だろう。
 俺からすれば雲の上の上の上の神様仏様みたいな方々を、こともあろうに部下として扱うなんて……ああ、考えただけで胃が痛い。
 どんだけムチャぶりだよ……あまりにもムチャすぎて、肛門からブリッと胃が出てきそうだよ……
 と、思っていた。
 だが、現実はまるで違っていた。
 まさか全く違う意味で胃が痛くなるような事態が待ち受けていようとは……

 俺の名前は春海 碧龍(はるみ あおたつ)。
 ……なんともはや、いかにもな氏名である。
 実はこの氏名は本名ではなく、育ての親がつけてくれた名前なのである。
 この育ての親というのがかなりの縁起マニアで、俺にありがたい名前をつけようと必死に考え、考えに考え抜き、考えすぎてしまった結果、この名前になってしまった。
 ちなみに俺はもともとみなしごで、実の両親は行方知れずである。
 そして俺には血の繋がっていない、同い年の3人の兄弟がいる。
 他の3人も俺と同じような境遇で、この育ての親に引き取られた子供達であった。
 幸か不幸か……不幸にも、この3人の兄弟達も俺に負けず劣らずのキラキラネームがつけられている。
 そんなキラキラした名前の4人は、同じ海軍兵学校に入学した。
 そして自慢ではないが……自慢だが、俺達4人はかなり優秀な成績で卒業したのである。
 卒業したその日、俺達4人は軍より極秘の命を受けた。
 それこそが提督に任免するという辞令なのであった。

 着任初日。
 司令官の軍衣を着込んだ俺は、まるで孫がいたずらでおじいちゃんの軍衣を着ちゃったみたいな、完全に服に負けてしまっているお子ちゃま状態。
 はっきりいって似合わない。
 それでも俺は仰々しい軍衣を着込んで、遠路はるばる、とある港へとやってきた。
 そこは秘密裏に作られた、超重要秘密を扱っている港であるらしい。
 そのため、この港に関する情報はまるで聞かされていないし、そもそもこんな港が存在していること自体、俺は知らなかった。

「鎮守府って……ここでいいんだよな?」

 一応、貰った地図どおりに来たつもりだ。
 とはいえ、地図には駅から徒歩3時間としか書かれていないし、駅からまっすぐ線が描かれていて、その終点にココって丸印がつけられているだけだ。
 もはや地図とは言えない代物だ。
 というか、徒歩3時間とは何事か……そんなに遠いのなら、徒歩以外の移動手段を用意してもらいたかった。

「似合わない軍衣を着ながら、たっぷりボリューミーな荷物を持ちながら、3時間という長旅をこなすというのは……はっはっはっ、なんだ? 嫌がらせか?」

 俺は盛大なひとりごとを言いながら、一枚の写真を取り出す。
 この写真は極秘である鎮守府に関する、唯一の資料だ。
 写真には茶色のブレザーに身を包む少女が映っている。
 かなりかわいい、間違いなく美少女だ。
 しかし俺が注目しているのはカワイイ少女ではなく、少女が身につけているモノだ。
 少女はひどく物々しい金属の塊のような武器、むしろ兵器というべきだろうか、とにかく少女は物騒すぎるモノを着装していたのである。
 そんなカワイイのか物騒なのか、なんだかよくわからない少女が、少し前屈みになって、こちらにピースしてウィンクしているのである。
 そして胸のあたりに矢印が引っ張ってあって、“ココに注目!!”と書かれていた。

「そんなご丁寧に注目だなんて書かなくても、見ますがな。見ちゃうがな。だって俺、男の子だもん!」

 俺は写真を見つめながら、派手にひとりごとを話す。
 この写真の少女は、どう見てもわざと胸の谷間を見せつけている。

「なんていい娘なんだ!」

 胸の谷間なんて、絶対に見ちゃうがな。
 注目の的でんがな。
 ガン見しまくって、写真に大穴あけたりますわ!

「ッて、そもそもなんなんだ、この写真。萌ミリタリーって奴なのか? こんな写真を渡されても、何が何だか……いや、嫌いじゃないけども、こういうの。むしろ好きです。大好物だお! 正直この写真、もっと欲しいお!」

 俺は写真の女の子を、特に胸をガン見しつつ、これからどしようか途方に暮れている。
 鎮守府に辿り着いたのはいいが、出迎えらしいものもなく、誰かに聞こうにも周囲には誰もいない。
 とりあえずそれらしい建物の、それらしい入口を見つけたので、扉をノックしてみる。

「すいませーん、今日からお世話になる提督ですけどー」

 返事が無い。
 お留守かな? ……そんなわけない。
 俺は溜息をつきながらそっと扉を開く。
 鍵がかかっていない、極秘裏なくせにずいぶんと不用心だ。

「……おじゃましまーす」

 おそるおそる中へと入ると、突然背後から声をかけられた。

「提督ッ! おはようございますぅ!」

「んひゃあ!! え!? 提督?! そんなに偉い人がいるの!? どこどこ? どこにいるの? って、提督は俺かぁ!!」

 すっかりパニックになっている俺を、目の前にいる少女が不思議そうに見つめている。
 歳の頃は、どう見ても中学生……いや、小学生か? ……この少女も写真の少女と同様、金属の塊みたいな兵器を身につけている。

「提督? どうされましたかぁ? ぼんやりしてないで、司令官室にいきましょうよぉ!」

 俺は少女に背中を押され、司令官室とやらに連れて行かれた。

「さッ、今日も一日がんばりましょうねッ! では、さっそくご命令を、提督ッ!」

 なにがなんだかわからないままに、俺は司令官室に通され、司令官の椅子に座らされた。
 そして少女は目をキラキラさせて、いまかいまかと俺の命令を待っている。

「えーと、あー、命令? いきなり命令とか言われてもなあ、逆に誰か俺に命令してくんないかなあ……あの、何していいのかわかんないんですけど」

 俺は困り果てた顔をしながら髪を掻きむしる。
 そして目の前にいる少女をまじまじと見つめる。

「?? なんだろう、不思議な格好をしているなあ。機械的というか、それなのに妙に女の子らしい服装をしているというか……っていうか女の子? なんで女の子? ここ、海軍だろ? そういう場所って女人禁制くらいな勢いがあってもおかしくないと思うんだけどなあ……ああ、わけがわからん……」

 俺は少女を見つめながらぶつぶつと呟き、完全フリーズしてしまう。

「提督? どうしましたですか、提督? おーい、提督? あれ? 生きてるのかな?」

“がッつぅぅんッ”

 少女は手に持っている金属の塊のような装備品を、提督である俺の頭におもいきり打ちつける。
 俺の目の前で火花のような星が飛び散り、鼻の奥の方から血の匂いがした。

「いってぇぇぇッ! 何すんだよぉ! ちょっとだけ死を感じたぞ!」

「あ、提督、生きてたぁ」

 少女は俺ににっこりと笑いかけ、ぴょこんと跳ね上がる。

「さッ、ご命令をッ! 提督ぅ!」

 ――――――

 ――――

 ――

 あれから数ヵ月が経った――

 いやー、びっくりだ。
 人間って慣れるもんだなあ。
 こんなびっくりどっきりとんでも状況下で、俺はすっかり提督してる。
 艦娘達に命令を下し、敵と戦う毎日を送っている。

 着任初日、俺は何が何だかわからないまま、目の前にいる少女に命令を出した。
 とりあえずこの庁舎内を案内してほしいという命令を。
 そして庁舎を案内してもらいながら、少女が何者であるのか、そもそも俺は何をすればいいのか、何と戦うのか、少女に聞いてみた。
 正直、俺の質問に対して知りたいことの一割あるかないか程度の答えしか返ってこなかったが、それでも俺が何をすべきなのかはわかった気がする。
 そして時が経つにつれて、少しづつではあるが、少女達の存在について、我々が倒さねばならない敵について、解ってきた。
 とはいえ、いまだにわからないことだらけだ。
 俺……こんなんでいいのかなあ……こんなちゃらんぽらんで無責任な提督、この世で俺だけだろうなあ……

 そうそう、これは最近知ったことなのだが、俺が着任したここは第二鎮守府というらしい。
 ……なんだろう、ってことは第一鎮守府があるってことだよな?
 ……なんだろう、ここってもしかして、2軍扱いなのか?
 ……なんだろう、それってまるで特車2……ぐふんッ、げへんッ! ……なんでもありません。
 はぁ、きっと第一鎮守府の提督さんは、さぞかしご立派なエリート軍人なんだろうなぁ……
 会ったこともないのに、負けた気分だ……

 さてはて、これからどうなっていくのだろうか。
 先は全く見えず!

 提督――それは艦娘の司令官である。
 艦隊――それは複数の艦娘で編成された謎の部隊である。
 艦娘――それは俺の大事な嫁……もとい、部下達である!


(任務達成)

目次はコチラ

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