そんな夢のようなことばかり書いてあるデリヘルのチラシを見て、僕は迷わず電話した。
そんなエロマンガやエロゲーやライトノベルにしか存在しないような女の子、この世に存在するわけがない。
わけがないのだが、僕は電話した。
絶対に騙しだ! そう解っていていても、僕は電話した。
だって……だってさ……
それが男ってもんだろう!
むしろ漢ってもんだろう!
僕の名前は須田メリ夫。
メリ夫なんてキラキラした名前だけど、自慢ではないが僕の人生はキラキラとは正反対のどんよりとしたものだ。
僕は童貞だ。
しがない社会人な僕は、二十代半ばにして童貞だ。
理由は聞かないでほしい。それは至極ありふれた理由だからだ。
女性に縁が無かった。
これに尽きる。
正しくはリアルの女性に縁が無かった、ということだ。
でもそのかわりに、ニ次元の女の子には縁はあったのだ。
ニ次元の女の子は究極かつ絶対の理想的存在。
それは夢と希望と愛欲と美しさにまみれた完璧かつ至高の存在。
そもそも人間の手によって生み出されたニ次元の女の子は、見る者を魅了するように作られた存在なのだ。
だから僕らが夢中になるのは至極当たり前であって、それでいて――
……と、僕のニ次元に対する想いを言葉にし出したらきりがないので、これくらいにしておくとして。
とにかく、僕はニ次元の女の子しか知らない。
だから知りたい、未知なる存在であるリアルの女性というものを。
そんな僕の純粋なる探究心を満たしてくれる方法……それはデリヘルかなと。
電話と家とお金があればリアルの女性を知ることができる、そして体験することができる……んだよね?
いやはや、世の中って便利だなあ。
さてはて、そろそろリアル女性が僕の家を訪ねてくるはずである。
郊外のさびれたおんぼろ安アパートに、巨乳で美乳で美しすぎるスタイルで若さ全開なメガトン級美少女がやってくる。
ひゃっほい!
僕は楽しみで胸を膨らましつつ、股間も一緒に膨らませている。
パンツに先走り汁を吸わせながら、僕は心待ちにしている。
“ぴ~んぽ~ん”
来た!
遂に来た!
女がきたぞー!
僕の家に、女がきたぞー!
僕は嬉しさと緊張でふわふわしながら、何度も小さくつまづきつつも、玄関の扉を開いた。
……ん? あれ?
……いない? 誰もいない?
僕は玄関を出て周囲をきょろきょろと見回す。
……誰もいない。
ピンポンダッシュか? 2階にいる僕の部屋を狙うとは、なんとも悪質なガキの所業だ。
僕はしょぼんぬな顔をしながら、部屋に戻ろうとする。
「あのぉ、お電話されました、須田メリ夫さんでしょうか?」
女の子の声が背後から聞こえた。
僕は驚いて、バッと後ろを振り返る。
うほーーーい!
そこには異様なほどに可愛らしいセーラー服を着た女の子がいた。
ツインテールに結んだ黒髪がとっても似合う、可愛いというよりは美人といった見た目の顔立ちな女の子。
だが雰囲気はどこかほわんとした天然っぽさが漂っていて、初対面でも全然大丈夫な感じな、とても接しやすそうな女の子。
そして巨乳! 美乳! 美しすぎるスタイル! 若さ全開! メガトン級美少女! デリヘルのうたい文句に嘘は無かった。
とにかく可愛い! 文句なしに可愛い! 僕はこれほどまでに可愛い女の子を、ニ次元ですら見たことがない!
「ちぇんじ」
僕は女の子に向かって、そう言った。
「え? え? そんな……ボクのこと、お気に召さなかった?」
「いや、その、なんていうか、すっごく可愛いです! 可愛いんです! 可愛いんですけど……」
女の子は嬉しそうににっこりと笑んだ。
「可愛い、ですか!? 嬉しい! 嬉しいけど……なんでチェンジなの?」
女の子は涙目になって僕に聞いていくる。
「んー、そのー、なんていうか……でかいから……大きすぎるですよ、ねぇ」
「え? 大きすぎですかぁ? それって、ボクの……おっぱいが、ですかぁ?」
女の子はあっけらした顔で、胸をもにゅもにゅと揉んで見せる。
「いや、その、確かにお胸も大きくて、とっても素敵なんですけど……」
「え? 胸は合格なんですかぁ? じゃあ、ボクの……お尻が大きすぎ、ですかぁ?」
女の子は背を向けて、あっけらした顔でお尻をぷりぷりと振って見せる。
「いや、その、確かにお尻もプリティで、とっても魅力的なんですけど……」
女の子は不思議そうな顔をして、僕をじぃっと見つめる。
「じゃあ、なにがいけないんですかぁ?」
「……キミ、でかいよ」
僕は目の前にいる女の子に向かって言った。
女の子は1階にいる。僕は2階にいる。それなのに僕は、女の子を見上げながら話している。
「でかい、ですか?」
「でかいよ、キミ」
確かに世界一の巨乳で、美乳で、美しすぎるスタイルで、若さ全開で、メガトン級美少女であるが、とにかくでかすぎる。
女の子はアパートよりも大きい。
どう考えても僕の部屋には入れない。
そもそも、これほどまでに大きな巨女子がこの世に存在するものなのだろうか……いやいや、あえてそこはツッこまないでおこう。話が進まなくなる気がするので。
とにもかくにも、僕の家に招き入れるという当たり前なことすら出来ないありさまである。
とても可愛いし、僕好みの女の子ではあるのだが……これは諦めるしかないだろう。
僕は断腸の想いで“ちぇんじ”と言ったのだ。
……いや、本当はあまりの大きさに圧倒されて、自然に“ちぇんじ”と口にしてしまったのであった。
「……えぐぅ、ひぐぅ」
女の子はツインテールを顔にあてて、涙目になって僕に顔を近づける。
「……えうぅ、ぼ、ボクぅ……ダメなのぉ?」
「あ、いや、ダメじゃないんだけどさぁ」
「……大きすぎですかぁ?」
「うん、でかすぎ」
女の子は涙をぶわわぁと溢れさせ、派手に泣き出した。
涙は滝のように地面に流れ落ち、大きすぎる泣き声は周囲の建物を震わせている。
「うわぁぁぁぁん! ちぇんじって、ちぇんじって言われたぁ! ボク、そんなにダメなのぉ?! うえぇぇぇぇん! ボク、ダメな子なんだぁ!」
「そんな大きな声でチェンジとか言わないで……ってか、近所迷惑すぎるから……もはや災害レベルだよ! お願いだから泣きやんで!」
「うわぁぁぁぁん! うえぇぇぇぇん! ひみぃぃぃん! びえぇぇぇぇぇぇん! みにゃあああぁぁぁん!」
女の子の声は周囲のあらゆるのもを超振動させて、じわじわと破壊していく。
窓ガラスにはひびが入り、停車している車はひどく揺れに揺れて勝手に進んでしまい、電柱はみしみしと折れ曲がっていく。
「ちょ! 本当にヤバいって! このままじゃニュースになるよ! 報道だよ! ちょ、本当にやめて! お願いだからやめて! ……わかった! わかったよ! キミでいいよ! いや、むしろキミがいい! キミでお願いします! ちぇんじ中止! ノーちぇんじでオケー?!」
ぴたっと災害がやんだ。
「わーい! やったぁ! ありがとうだよ! ボクでいいんだよね! ボクうれしいよ!」
女の子は嬉しそうな満面の笑みを僕に寄せてくる。
巨美少女がバスケットボールのような大きな瞳で見つめてくると、なんとも言えない迫力と圧力があいまって、僕の心臓が止まりそうになるほどの超ときめきを感じてしまう。
「……でもさ、僕とキミほどにサイズ差があると、できるものもできない気がするんですけど……」
「んふふふ~ん、んもうそんな心配しちゃって、お客さんってばエッチなんだからぁ」
「いや、当然の疑問だと思うんだけど……」
女の子は周囲の目を気にすることもなく、あっけらとした顔をして話始める。
「確かにボクとお客様は大きさが違うけど、でも大丈夫だよ。ちゃんといいことしてあ・げ・るッ」
「……でもさ、場所はどうするの? 僕の部屋に入れないよね?」
「んふふ~ん、それも大丈夫だよ」
女の子は巨大なバッグを手にとり、中をがさごそと探す。
そして巨大すぎるバッグには“SamanthaThavas●”という文字が押されていた。
「すごいな、SamanthaThavas●……」
女の子はバッグから巨大な簡易テントを取り出した。
「近くに公園があったよね? そこに行こうよ」
女の子はズシンズシンと道を揺らしながら、公園に向かって歩き出してしまう。
「ちょ! え? 公園?! 公共の場でするの!? ってか、おいてかないで!」
僕は急いで戸締りをして、とりあえず財布を持って女の子を追いかけた。
それにしても速い。彼女の1歩は僕にとっては約10歩に相当する。そのせいか、僕が全力疾走してもなかなか追いつけない。
しかし彼女を見失うことは無かった。どんなに離れていようと、あれだけの巨体であれば見失うはずもない。
そうこうしているうちに、僕達は公園についてしまった。
どこにでもある児童公園。園内ではキャッキャと幼児達がはしゃぎまくっていて、ベンチでは親達が世間話に花を咲かせている。
「さってとぉ、ここでいいかな」
女の子は広場になっている場所に、手慣れた感じでテントを設置する。
テントとは言っても、小規模のサーカスくらいの大きさがある巨大なものだ。
公園に突如として現れた巨大テント。幼児達は何事かと寄ってくる。しかしテントにはデカデカと“準備中につき立入禁止”の張り紙が貼られている。
立入禁止なテント内には、関係者である僕と女の子しかいない。
「改めましてッとぉ」
女の子は人差し指の上に小さな紙片を乗せて、僕に差し出す。
紙片には店名と女の子の名前が書いてあった。
「ボク、ディアンヌだよ。メガデリヘル・パラダイスジャイントDXの新人さんなんだよ」
ディアンヌと名乗る巨美少女。それが実名なのか偽名なのかはわからないが、僕は頬を赤らめながら無意識につぶやいた。
「ディアンヌちゃんかぁ、かわいい名前だね」
「ホントにぃ? ホントにそう思う?!」
突然、僕はディアンヌに握り掴まれ、僕の身長以上に大きい顔で、僕を頬ずりする。
「うれしい! ボクの名前をかわいいって言ってくれたの、お客さんが初めてだよぉ」
嬉しそうにはしゃぐディアンヌは、僕を容赦なく頬ずりしまくる。
物凄い力だ。僕の背骨はいつ折れてもおかしくないほどにギシギシと悲鳴を上げている。首はいつもげてもおかしくないくらいにグリングリンとこね回されている。
「……あ、あの、ディアンヌさん? 僕、死ぬと思います。切実に死を感じていますよ?」
僕の声にハッとしたディアンヌは、突然に手を広げた。ディアンヌの手から解放された僕は、地上3メートルくらいの高さから受け身も取れない状態で落下させられる。
「ぎゃふんッ」
僕はドシンという音とともに、臀部と腰を強打した。
痛い。かなり痛い。鼻に血生臭いにおいを感じるくらいに、全身に衝撃が走る。
「ごめんね、お客さん! んもうボクってば、禁則事項として“お客様を掴み上げない”って言われてたのにぃ」
「あははははははぁ……守ろうね、禁則事項……」
気を取り直して。
ディアンヌは立ち上がり、僕をディアンヌの足元にいざなった。
そしてディアンヌは僕に上を向くように言った。
「うあぁぁ」
パンツが丸見えである。スケール1分の10(くらいかな?)なパンツだ。
普通のパンツ。健全なパンツ。だけど縞パン。優しくて爽やかな淡い色で、柔らかそうなタオル地チックな薄い素材のパンツ。
制服に縞パンの組み合わせは王道であり神。むしろ邪神。そんな神な状況を、僕はまじまじと見上げながら、心ゆくまで堪能する。
「こんな迫力のあるスカート覗き……しかも神設定……すげーぜ、パラダイスジャイントDX」
圧倒されながらもディアンヌのパンツを凝視する僕に、ディアンヌはクスッと笑みながら話しかける。
「お客さん、楽しい?」
僕は口をあんぐりさせながら、ウンウンと頷く。そしてハッと思いついた。
この神な状況を、更に神にする方法を。
「ディアンヌちゃん、お願いがあるんだけど……僕のこと“おにぃちゃん”って呼んでくれないかな」
「おにぃちゃん?」
「そう、兄妹っていう設定で」
「ふーん、お客さん、そういうのがいいんだぁ」
ディアンヌは悪戯っぽく笑んで、僕を見つめながら言う。
「ボクのパンツ、かわいい? おにぃちゃん」
……うぐはぁ!
これはイカン! これはヤバい!
巨大すぎるスケールの妹! しかも制服! 更に縞パン! おまけに黒髪ツインテール!
ああああああ、これは神だ。いや、神を超える勢いだ。
宇宙!
脳内がぐわんぐわんと揺れている僕に、妹は笑いかけながら言う。
「おにぃちゃん、このあとどうしてほしい?」
「どうしてほしい? そういわれると、どうしたらいいものかな……」
普段、二次元の女の子と脳内であんなことやそんなことをして、エッチに関しては神レベルの熟練度を誇っている僕であったが、いざリアルになると、どうしていいのかわからない。
模試ばかり成績がいい僕は本番は空っきしであると、まざまざと認識させられる。
「おにぃちゃんってば奥手さんなんだね。じゃあ2択にしてあげるよ。A:ボクのスカートを脱がす。B:ボクのパンツを脱がす。どっちがいい?」
……うぐぬはぁ!
ちょ、それは!
この2択なら、僕は迷わずコレですがな!
「Bでファイナルアンサー」
「んふッ、おにぃちゃんってばスケベさんだね。いきなりパンツなのぉ?」
妹はそう言いつつも、ペタンとお尻をついて座り込む。
「はい、どうぞ」
「はい? どうぞって?」
「脱がせて」
「え? ええ? えええええええええ!?」
僕が脱がせるの? ちょ、それは無理な気がするけど!?
僕の10倍近くスケールが大きいディアンヌのパンツを脱がすという所業は……うーん、できるのかなぁ。
僕は意を決して、ディアンヌのスカートの中へと侵入した。柔らかで温かい太ももの奥を目指し、遂に縞パンまで辿り着く。
「壮観だなぁ。こんなにでっかい縞パン……どこに売ってるんだろう?」
僕は恐る恐るパンツの端っこに触れた。
初めて触れる女の子のパンツ。
僕はガッシとパンツを掴み、思いきり脱がしにかかる。
初めて脱がす女の子のパンツ。
「……無理です」
「え? 無理? できない?」
「無理ですよ、ディアンヌ」
端っこが少しめくれるだけで、とてもではないがパンツを脱がすのは不可能であった。
これだけ大きいと摩擦抵抗も大きすぎるし、なによりディアンヌの体重がのしかかっているパンツをずり下げるなんて、スケール10分の1な僕にできるはずもない。
「うーん、しょうがないなあ。じゃあ、脱いであげるよ」
ディアンヌが立ち上がりる。そして少しだけ頬を赤らめながら、ディアンヌはゆっくりと縞パンを脱いでいく。
するするする……ばすぅん!
縞パンは長すぎる脚を滑り落ち、床へと落とされた。ほかほかの脱ぎたて巨大縞パンから、ほんのりとディアンヌの甘い香りがしてくる。
それだけでも夢心地になってしまう僕は、おもむろに上を見上げた。
「ギャーーーーース!」
上空にあるのは1分の10スケールの巨大マ●コ。
黒い陰毛でうっそうとしているそこは、まさに密林、ジャングルである。
ほどよい量の陰毛に隠されている巨大マ●コは、うっすらとだが、割れ目を確認することができる。
ぴっちりと閉じられているが、それがむしろいやらしい。
「刺激がつえええええぇぇぇぇぇぇッ!」
僕にはありにも刺激が強い。思わず叫び上げてしまうほどに刺激が強い。
当然のように、生のオマ●コなんて僕は初めて見る。
ネット上ではいくらでも見てきたオマ●コだが、画面越しではなく直接目の当たりにするのは初めてである。
「おにぃちゃん、また2択だよぉ。A:ボクのオマ●コをひろげる。B:ボクがオマ●コをひろげる。どっちにする?」
(つづく)
※この文章はサンプルになります。
全文は同人誌「七つの余罪」に収録いたします。
<内容>
マンガ:メガデリヘル「パラダイスジャイントDX」 アソコ編
小説:メガデリヘル「パラダイスジャイントDX」 アソコ編
小説:フォックスシンの欲しいもの
★[[jumpuri:小説:フォックス・シンの欲しいもの のサンプルはコチラ > http://mahupoko.blog.2nt.com/blog-entry-212.html]]
目次はコチラ
ここは死者が住まう、命ある者が訪れるはずないの場所。
バンは死者の都に入るやいなや、突然走り出した。
そして全身の神経を研ぎ澄ましながら、もうこの世にはいない聖女を探す。
「いないのか? ここでなら会える気がしたのによ」
バンは革パンのポケットに手を突っ込みながら、髪を無造作に掻いて溜息をつく。
「残念そうね、バン」
背後から聞こえた声に、バンは目を見開いた。
「ハッ、別に残念じゃねーさ。もののついでに来たんだ、ここにはよ」
「ついで?」
「ああ、団ちょたちが俺らのつれ……キングって奴をよ、死者の都に探しにきたんだ。これがついでの方だ。俺の本当の目的はよぉ」
バンは後ろを振り返り、目の前にいる少女に言う。
「おまえに会いにきた」
少女はバンの胸に飛び込む。
「バン! バンッ! バンンンッ!」
バンは少女の頭を優しく撫でながら、意地悪い笑みを浮かべて言う。
「エレイン、それじゃガキんちょだぜ。生命の泉を守ってた聖女の威厳ってもんがまるでねーぜ」
「いいもん! ガキんちょでいいもん! バンよりも年上な姉さんガキんちょでいいもん! 今はとにかく嬉しいの! バンに会えて本当に嬉しいの! 嬉しいよバン!」
「ハッ、ちげーねぇな」
バンは胸の中で甘えているエレインの顔を上げさせる。
目にいっぱいの涙を溜めて、嬉しい気持を包み隠さず見せつけるエレイン。
「ん……」
バンはエレインの顎をクイッと持ち上げ、唇を重ねる。
そしてバンは大胆にエレインの中に侵入する。バンの長い舌がエレインの舌に触れる。
「んんッ」
バンの舌はエレインの舌を優しく撫でた。
バンに舌を撫でられていると、とても温かな気持ちになってくる。
エレインはバンの舌を求めるように、自分の舌を絡めて撫で上げる。
「おまえって結構本能的で野性的なのな。普段は大人しそうなくせして、いざってときには本性剥き出しにするってのはよぉ、自分に嘘がなくて好きだぜ」
エレインはバンの首に腕をまわし、バンに抱きつく。
「野性的なのはバンでしょう? バンには嘘がないもの。自分に嘘がないし、他人にも嘘がないの。私ね、そういう偽らない、偽ろうともしないバンに出会って、私も正直でいようって思ったの」
「そうか……」
「そうだよ、バン。私は自分に嘘をつかない、もう自分を隠さないよ。だからね……好き! バンのことが好き! 私はバンが大好き!」
エレインは小さな舌でバンを求める。
バンの舌を舐め、バンの口裏を舐め、バンの頬の裏を舐める。
「そうか……俺もよ、好きだぜ。エレイン、おまえが好きだ」
「知ってるよ。だって私、人の心がわかるもの。だから伝わってくるの、バンの私への気持ちが。すっごくすっごく伝わってくるの。私、嬉しいよ。こんなに私のこと好きになってくれて」
バンはエレインの舌を振りほどき、エレインの歯茎を、エレインの舌裏を、エレインの歯を、エレインの口の中を、隅々に渡って撫でまわす。
ひどく大胆で荒々しい、しかしとても優しくて繊細。
エレインはピクンと身体を揺らし、うっとりとした顔をしながらバンに身をまかせる。
「バン……大好き……」
エレインは涙を流しながら、バンの正直すぎる口づけに酔いしれる。
「エレイン、おまえにお願いがある」
「お願い?」
「ああ、今どうしても欲しいものがあるんだ。俺はそれを手にするために、ここに来たんだ」
バンは無造作に唇を離し、エレインの目をまっすぐに見つめながら真顔で言う。
「俺は絶対におまえを蘇らせる。それがいつになるかはわからねえが、絶対に蘇らせるぜ。だが、それまでの間、どうしても欲しいものがあんだよ」
「欲しいもの? それって私があげられるものなの?」
バンは涙で濡れているエレインの頬を、長い舌で舐め拭く。
「ああ、そうだ。俺はおまえとの思い出が欲しい。とびきりの思い出が欲しいんだ」
「思い出? とびきりの?」
「思い出って奴はよ、すっげー大事なんだよ。すげぇきついときでもよ、すっげぇヤベぇときでもよ、ぜってぇに無理ってときにでもよ、とびきりの思い出って奴があれば、なんとかなっちまうんだよ」
「思い出が人を支えてる……ってこと?」
「そうだぜ。俺みてぇなカス野郎のクソ人生でもよ、それなりにいい思い出ってのがちらほらあんだよ。お宝を手に入れたりよ、最高にうんめぇエールと出会ったりよ。気持ちが落ちまったときには、そういうのが俺を支えてくれんだよ」
「そうね、バンの言う通りだよ。私にもそういうのあるもの……うん、私もバンとの思い出が欲しい! とびっきりの思い出が欲しいよ!」
バンはエレインの耳に優しく噛みつく。
そして耳を丁寧に舐めながら、ツツぅとエレインの首筋に舌を滑らせる。
「んぁッ、バ、バン……」
潤んだ目をしながら切ない顔でバンを受け入れるエレイン。
性の経験が皆無な聖女エレインは、緊張して身体をこわばらせている。
そんなエレインの首筋を這いまわるバンの舌はひどくゾクゾクして、エレインの気持ちが変にされていく。
そしてエレインの強張った身体は、心地よく弛緩していく。
「おまえは何もしなくていい……俺に全部まかせてろ……」
バンの言葉を聞いて、エレインは力の抜けた身体を起こす。
そしてバンの顔を抱き寄せて、おでこにキスをする。
「エレイン、まかせてろって言ったろぉ?」
「やだ! 私だってするの! だって大好きなんだもん、バン……」
「しょーがねー聖女様だなぁ」
バンのおでこにキスし続けるエレイン。
小鳥がついばんでいるようなエレインのキスは、いやらしさがひとかけらもない、とても可愛らしいキスである。
しかしキス1回1回にバンを想う熱い気持ちがこめられていて、バンの胸はどんどんと加熱させられていく。
「やべーな、こりゃ。俺の方が変になっちまうわ」
バンはおでこにキスをされるがままに、エレインの肩に手を掛ける。
そしてそのままエレインの真っ白なドレスを下げた。
「キャぅッ!」
エレインの胸があらわとなる。
とっさにエレインは両腕で胸を隠そうとする……が、出来なかった。
バンの顔を抱いている腕を、エレインは離したくなかった。
バンを抱いていたい、捕まえていたい、離したくない。
胸をさらされたエレインは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、バンのおでこにキスをし続ける。
「最高にかわいいぜ、エレイン」
バンは薄く小さなエレインの胸に顔を寄せ、両の手で小さな乳房を包む。
「んッ」
小さく反応を示すエレインを見つめながら、バンは乳房を優しく揉み上げ、乳房の先端に長い舌を伸ばす。
「んぁッ……バン……な、舐めちゃうの?」
「ああ、舐めるぜ。これからおまえの全身を隅から隅まで舐めつくすぜ」
「んぅぅ……そ、そんなこと言われたらぁ……やぁぅ、変な気持ちになるよぉ……」
バンはべろぉぉぉと、エレインの可愛らしい乳首を舐め上げた。
エレインはピクンと身体を揺らし、乳首に流れた電流のような快楽に耐える。
声を殺して耐えるエレインを見て、バンはゆっくりと丁寧にエレインの乳首を舐め擦る。
「んふぅッ! そ、そんなのダメぇ……声、出ちゃうよぉ……」
「じゃあ、これならどうだぁ?」
バンは乳首を舐め上げながら、もう片方の乳首をつまんだ。
ふにふにとひどく優しく揉み、くにゅくにゅとこね回し、ずりりと乳首の先端を擦り上げる。
「んはぅッ! やんんッ! イジワルぅ! そんなの声が出ちゃうよぉ! イジワルだよぉ、バンッ!」
「ハッ、意地が悪りぃのは俺の人格そのものだぜぇ。諦めなぁ」
エレインは真っ赤になった顔をバンに向けて、ひどく小さくつぶやいた。
「……イジワルなバン……すきぃ……」
バンの背中にビリッとした電流が流れた。
久しく感じたことがなかったぞくぞくする電流。
バンはたまらなく切ない気持ちにさせられ、エレインという聖女にのめり込んでいく。
「ったく、マジでかわいいぜ、エレイン」
バンはスッと頭を下げてエレインのお腹に舌を這わす。
ゆっくりとエレインのドレスを下ろしながら、べろぉぉぉと舌を這わしていく。
抱いていたバンの頭が逃げてしまい、エレインはとても寂しい気持ちになる。
切なくて寂しい……エレインは耐え兼ねてしまい、バンを追いかける。
お腹を舐めているバンの背中に抱きつき、エレインはバンのジャケットをめくり上げる。
そしてバンの背中に小さな舌を這わせる。
チュッとキスしながら、ちろちろと背筋を舐めていく。
「んくッ」
バンの全身にビリついた電撃がほとばしった。
性なる行為を知りえない聖なる少女が行う、精一杯の性技。
それはとても性技とは言えない子供っぽすぎる稚拙な行為であったが、バンは自分でも驚くほどに感じていた。
「……そっか……そうだよな……」
バンは気がついた。なぜこんなにもエレインに感じてしまうのか。
エレインがバンを想う熱くて強すぎる大好きな気持ち。その気持ちに負けないほどに強い気持ちがバンの中にもある。
お互いが想い合う気持ちはふたりが触れ合うことで何倍にも倍加し、聖女をも狂わす情愛となってふたりをつき動かす。
まるで発情期の獣のように、犯す方は全力で犯し、犯される方は全力で犯される。
そんな愛欲に真っ正直な気持ちがふたりを支配している。
倍加したエレインを想う気持ちは、バンがこれまで経験したことがない未知な世界にバンを連れて行ってしまう。
「バン……嬉しい……私、嬉しいよ……」
エレインは目に涙を溜めながら嬉しそうに笑った。
「バンの気持ち……私に流れてくる……バンの想いが、私の中に入ってくる……嬉しい……すごく嬉しいよ……」
人の心が読めるからだろうか?
それとも想い合っているふたりだからだろうか?
お互いの中にある熱い気持ちがお互いの中へと流れ込み、熱い気持ちはどこまでも倍加していく。
バンは腰下までエレインのドレスを下ろすと、今度はドレスをたくし上げてエレインの脚をあらわにする。
そしてバンはエレインの太ももに舌を這わす。
「ひぃゅッ」
むずっとした快楽にエレインは小さな悲鳴を上げた。
バンは太ももから足先にかけて、まんべんなく脚全体を舐めていく。
太もも、膝、ふくらはぎ、かかと、足の甲、足の裏……そして、足の指。
「んゅッ、んうううッ」
バンはエレインの小さくて細い足の指を口に含み、長い舌でべろべろと舐めしゃぶる。
更に足の指と指との間を、くすぐるように舐め上げる。
くすぐったい気持ちよさにエレインは身悶える。
身を震わせながらも、エレインはバンの身体を求めて抱きつき、エレインもバンの身体を舐め上げる。
お互いを舐め合うバンとエレイン。
バンは脚を舐め尽すと、舌をずずずぅぅぅと一気に走らせて、エレインのうなじにまで舌を這わせた。
いきなりの大移動に戸惑いながらも、エレインは必死になってバンに抱きつく。
そしてバンの身体をぺろぺろと舐める。
「ふゅッ」
エレインが甘い悲鳴を上げる。
バンはエレインのうなじを舐め、そのまま背中を舐め、脇の下をじっくりと舐め上げる。
じっくりとゆっくりと脇を舐められてしまい、エレインはどうしようもなく恥ずかしい気持ちにさせられる。
それでもバンを抱いていたい気持ちの方が勝ってしまい、エレインはバンに抱きついたまま離そうとしない。
それをいいことに、バンは脇の下を執拗なほどに舐め尽し、そしてそのまま脇腹に舌を這わす。
ぞくぞく、ぞわぞわとした快楽がエレインを襲う。
身が動いてしまう、鳥肌がたつ、声が漏れてしまう、お腹のあたりがじんわりと温かくなる。
それでもエレインはバンにしがみついている。
バンは追い討ちをかけるように、エレインのドレスをめくってお尻をあらわにする。
そしてエレインの愛らしいお尻に舌を這わす。
「にゅぁッ」
バンの舌はお尻の割れ目をぬろぬろと舐め上げ、少しづつお尻の奥へと舌を埋めていく。
だんだんとバンの舌がエレインの隠された秘門へと近づいていく。
物凄く恥ずかしい。
エレインは身が燃えるような羞恥にさいなまれる。
しかしバンは容赦なく舌をお尻の割れ目の奥へと埋めていく。
そして遂に、バンの舌先が秘門に触れた。
「ひゃぁうんッ」
お尻の穴を舐められてしまい、身を震わせて身悶えるエレイン。
おっぱいとは違い、排泄器官という役割を担っているお尻の穴は、どうしても見られたくない、どうしても触れてほしくない、ましては舐めるなんて言語道断な、どうしても隠しておきたい場所である。
恥ずかしいなんて生易しいものではない、とてつもなく強烈な羞恥にエレインは襲われた。
恥ずかしさのあまりにエレインはお尻の穴に力を込めて、キュッと締めてしまう。
力のこもったお尻の穴を、バンは丁寧に、優しく、繊細に、しつこく、いつまでも、舌先でくすぐるように舐め続けた。
そうしているうちに、エレインはふわふわとした心地よさに包まれていき、緊張が解けていく。
お尻の穴が柔らかくなり、緩み、秘門はもはや、鍵の外されたただの門になってしまった。
当然、門への進入はた易い。
「やッ! やぁッ! それはダメぇ! 絶対ダメぇ! そんなのダメだよぉ……それはダメぇ……入ってきちゃダメぇ……」
バンの舌はエレインの小さなお尻の穴をこじ開け、穴の奥へと侵入する。
肛門の奥に舌が進入する。
それはエレインの恥ずかしい味、知られてはいけない味を、バンに知られてしまったことを意味した。
排泄器官である肛門の奥には、当然、排泄されるべきモノがある。
排泄物――
その味を知られたことを意味する。
エレインは何かとんでもないものを失った気がした。それと同時に知ってはいけない何かに目覚めてしまった気がした。
バンはエレインのお尻の穴の中で舌をうごめかし、お尻の中を味わうように直腸を舐め上げる。
恥ずかしい、どうしようもなく恥ずかしい。既に絶命しているにもかかわらず、恥ずかしくて死んでしまいそうになる。
しかしそれでもエレインはバンに抱きついたまま、バンを舐めている。
「おまえ、いい根性してんぜぇ。俺の舌は下手すりゃ失禁もんの、激やべぇ穴舐めなんだがなぁ」
激やべぇ舐めなのはバンだけではなく、エレインの舐めもそうであった。
エレインと同じく、バンも身悶えそうな快楽に耐えていた。
稚拙な舌づかいではあるのだが、極上すぎる快楽がバンを襲っていた。
膀胱が緩んで失禁してしまいそうなのは、むしろバンの方であった。
それを解っているのかいないのか、エレインは必死になってバンの身を舐め上げる。
「恥ずかしいよ……変になりそうだよ……気が狂いそうだよ……死んじゃいそうだよ……でもね、バンに抱きついてるとね、バンを舐めているとね、正気を保っていられるの……バンを想っているとね、大丈夫なの……」
バンはエレインのお尻の穴から舌を引き抜き、抱きついているエレインを引き剥がす。
そしてバンはエレインの腰に掛っているドレスを、一気に引き下げて脱がしてしまう。
遂にエレインを隠すものは何ひとつ無くなり、聖女の裸体があらわとなる。
「ッ!」
エレインはバンの目を見て、どうしようもない羞恥に襲われた。
バンの目は明らかにエレインのオマ●コを見つめていた。
M字に開かれたエレインの脚の奥を、バンが見つめている。
エレインのオマ●コは無毛で、開脚してるにもかかわらずぴっちりと閉じていた。
それはまるで子供のような、幼いオマ●コ。
「エレインよぉ」
「な、なに? バン……」
「舐めるぜ」
エレインは胸が張り裂けそうな、胸を締めつけられるような、息が止まってしまいそうなほどに胸が苦しくなった。
バンがオマ●コを見つめている。しかも舐めると言いきった。
おっぱいを舐められたときよりも、お尻の穴を舐められたときよりも、比べ物にならないほどに恥ずかしい。
「あ……」
思わず声が出てしまった。
バンの顔がオマ●コに近づいてくる。
少しづつ、しかし確実に、バンの舌がオマ●コに近寄ってくる。
“ぴくぅん”
エレインの身体が弾んだ。
バンの舌先がエレインのぴっちり割れ目に触れた。
ぷにぷにとした柔らかそうな恥丘に挟まれた、聖女のオマ●コ。
その恥丘をバンの舌が這いまわる。
「やぁぅ……すごくむずむず……これ……はぁぅぅ……ぴくぴくしちゃうぅ……」
(つづく)
※この文章はサンプルになります。
全文は同人誌「七つの余罪」に収録いたします。
<内容>
マンガ:メガデリヘル「パラダイスジャイントDX」 アソコ編
小説:メガデリヘル「パラダイスジャイントDX」 アソコ編
小説:フォックスシンの欲しいもの
★[[jumpuri:小説:メガデリヘル「パラダイスジャイントDX」アソコ編 のサンプルはコチラ > http://mahupoko.blog.2nt.com/blog-entry-213.html]]
目次はコチラ
詳細はHP「艦これ、こちら鎮守府第一基地前駐在所」にて
※艦隊ウラこれくしょん 高雄型重巡姉妹編 序章はコチラ
【艦これ】艦隊ウラこれくしょん 高雄型重巡姉妹編
第1章:任務【「高雄」型重巡二番艦をおっぱいで撃破せよ!】
第01話
俺は提督。
提督ですよ、提督。
……提督なんだけどなあ。
俺は司令官室で艦娘達に命令を出す日々を送っている。
艦娘達は俺を信じて、俺が下す命令を忠実に遂行して、見事に成果を上げて帰投する。
そして俺と艦娘達の間には血縁をも超える固い絆が生まれ、固く結ばれているのだ………………だったらいいのになあ。
なんだろう、俺って艦娘達にとって、空気なのかなあ……
好かれているとは思う。
信頼もされてるんじゃないかなあ。
だけどなんだろう、上司と部下の関係のはずなんだけど……でもなんていうか、友達感覚っていうか……いや、そういうのとも違うなあ……なんていうか、こう……
男だと思われていない??
なんだろうなあ……艦娘達って俺に対して恥じらいがないっていうか……むしろ艦娘同士の方が恥じらいがある気がするし……俺って嫌われてるわけじゃないんだど……好かれてる気もしないし……艦娘達は俺に興味がないのかな……そうではないと思いたいが……とにかく素っ気ないというか……とりあえずそこにいればいいんですッて言われてるような、そんな気がしてならないんだよな……俺って必要なのかな、艦娘達にとって……
はぁ、自信なくすわぁ。
“ぐうううううぅぅぅ”
はぁ、腹が鳴ったわぁ。
「もう昼か」
俺は司令官室を出て、食堂へと向かう。
「あら、提督?」
食堂の前にまでくると、愛宕が俺に気がついて声をかけてきた。
高雄型重巡二番艦、愛宕。
さすがは重巡、と思わせる迫力あるボディ。
それは見る者を有無も言わさずに魅了する、もはや卑怯とも言ええるほどに魅惑的な……
「おっぱい!」
「??提督??」
愛宕はきょとんとして俺を見つめている。
いけない、ついつい声に出してしまった。
でもなあ、反則ですよ、愛宕のおっぱいは。
もはや人間やめてるレベルですよ。
素晴らしいお胸ですもの、これは。
これはいいものだ! と、先人な偉い人も言ってたですよ。
「提督ってもしかして、お食事はここで食べていらっしゃるのですか?」
「ああ、そうだよ。俺、料理苦手だしさ。なにより美味いんだよね、ここの飯」
俺の声が聞こえたのだろうか、食事番をしている間宮が顔を出し、にっこりと優しい笑みを俺に向ける。
給糧艦の間宮は料理の腕がプロ顔負けのレベルで、噂では美食●楽部の引き抜きにあったとか、美●會にさらわれそうになったとか、美●人間国宝の称号を持っているとか、グ●メ細胞の持ち主だとか、とにもかくにもとてつもなく料理が美味いのである。
俺は緩んだ笑顔を間宮に向けて、へらへらぁと手を振った。
「て・い・と・くぅ」
あれ? いま一瞬、愛宕が怒っていたような気が……いやはや、気のせいだろう。
鋭い殺気を感じた気がして、俺は愛宕の方に向き直る。
しかしそこにいるのは、いつもどおりの愛宕である。
「そうだ、あとで司令官室にきてくれないか。いま改装を考えててさ、相談しようと思ってたんだ」
「本当ですか提督! うふッ、お食事が済むころにおじゃましますね」
俺はノレンをくぐって食堂へと入っていく。
「いつもの定食お願いねー」
俺はへれへれぇとにやけながら間宮にだらしない笑顔を向ける。
“ぞくぅぅぅッ”
背中に流れる冷たい電流。
今度はしっかりと感じた鋭利な殺気。
俺は目を見開いて、びくびくしながら後ろを振り返る。
しかしそこにいるのは、にこにこと笑っているいつもどおりの愛宕である。
「気のせい……だよな?」
愛宕はにっこりと笑ったまま、つかつかとその場をあとにした。
……それから一時間ほどが過ぎ、俺は司令官室に戻ってきた。
「げふぅ、喰ったなぁ、スペシャル艦隊定食・砲雷撃戦盛り」
腹が膨れすぎて軍衣からだらしなく腹がはみ出ている俺は、椅子に寄り掛かりながら腹をさすっている。
「失礼しますね、提督」
食後のまったり気分に浸かっている俺の元に、愛宕がやってきた。
愛宕はにっこりと俺に微笑みかける。
「提督。ご相談というのは」
「そうそう、愛宕はいつも頑張ってくれてるからさ、ここらでパワーアップしてもらっちゃおうかと思ってさあ」
愛宕の顔がパァッと輝やき、目をキラキラさせながら満面の笑みを浮かべる。
「本当ですか?! 私、強くなっちゃう! うふふっ、ありがとうございます、提督ぅ」
「げふぅッ……あ、ごめんね、愛宕。いやはや、喰い過ぎちったなこりゃ」
輝いていた愛宕の顔が急に陰り、もやもやとした真っ黒いモヤに愛宕が包まれる。
「なぁ! なになになにぃ?! どどど、どうしちゃったかな、愛宕さん!?」
ただならぬ雰囲気の愛宕を目にし、俺はかつてない恐怖に襲われた。
「提督ぅ……そんなに美味しかったのですか? ……そんなに嬉しそうにしちゃって……そんなに好きなんですか? 間宮さんが!」
「え? え?? 間宮が好きかって? あの奇跡のスペシャル艦隊定食のことか? ……好きですけど? むしろ大好き」
愛宕を包んでいるモヤが更に邪悪さを増して増殖する。
「好き!? そんなに間宮さんが好きなんですか?!」
「好きですけど、定食……美味しいし……」
「美味しい?! ですってぇ! 間宮さんが?! 間宮さんが美味しいんですか!? 間宮さんを食べちゃったんですか?!」
「うん、美味しいんだよ、定食……美味しいからさ、朝昼晩の3食、全部食堂で喰ってるんだよ……しかも毎日」
「朝昼晩!? しかも毎日?! そ、そんなに間宮さんと……そんなにたくさん、間宮さんのことを……」
愛宕の背後からゴゴゴという地響きのような低音が聞こえてくる。
愛宕と会話をすればするほど、恐ろしいほどの殺気が増していく。
「ちょ、どうしたの愛宕さん?!」
「……提督が……提督がそんな人だったなんて、思わなかったです……」
愛宕は目を真っ赤に光らせながら、キッと俺を睨みつける。
俺は邪神に睨まれたように動けなくなり、がたがたと震えながら愛宕を見つめる。
「不潔です、提督ぅぅぅッッッ!!!」
“どかーん”
一瞬の出来事だった。
愛宕は俺に向かって砲撃した。
カァッとまぶしい光に包まれたかと思った次の瞬間、司令官室は大爆発して吹き飛んだ。
「……………………げほ」
俺の頭は爆発アフロになり、全身がすすだらけになっている。
軍衣はぼろぼろ、部屋はもっとぼろぼろ、なにもかもがぼろぼろ……
愛宕はくやしそうに目に涙を溜めて、ずたぼろの俺を睨みつけている。
――しばらくして
優秀すぎる妖精さん達のおかげで、なんとか元に戻った司令官室。
その司令官室の中で、愛宕は俺に向かって何度も何度も頭を下げる。
「申し訳ございませんッ! 私ったらなんてことを」
「あ、いや、いいんだよ。誤解が解けたんならさ」
「食べたのは間宮さんじゃなくて、間宮さんが作ったご飯の方だったんですね」
「そりゃそうだよ。いやはや、とんでもない勘違いだなあ」
愛宕は申し訳ない気持ちでいっぱいなようで、目を潤ませながら俺を見つめている。
「大丈夫だよ愛宕、俺は怒ってなんかいないから」
「……本当ですか?」
「本当だって、気にしてないから。だからもう謝らないでよ……それにしても、なんでそんな勘違いしちゃったかな。しっかり者な愛宕らしくないよ」
愛宕は頬を赤くして、もじもじしながら上目づかいになって言う。
「……だって……すっごく仲がよさそうだったから……」
俺の心臓がドクンッと高鳴った。
愛宕が嫉妬していた。
俺はいままで、艦娘達に異性として見られていないと思っていた。
しかし愛宕は明らかに嫉妬している。
いきなり見せられた愛宕の女の子らしさに、俺は戸惑いながら全身を熱くする。
「仲がいいって? そりゃご飯のお世話をしてもらってるし、間宮って母性溢れまくりの誰とでも仲良くなっちゃう性格だし……でも特別に思ってるわけじゃなくてさ、鎮守府にいる皆は全員が仲間だろ? ファミリーだろ? だから家族としてのコミュニケーションというか、なんというかさあ」
「……でも、間宮さんといっしょにいる提督、すっごくデレデレですよ?」
「ええ? デレデレ?? そんなことないよ、いつもの俺だよぉ」
「いいえ、デレデレでした。デレンデレンのデレデレ提督でしたよ」
確かに……俺はデレデレだったと思う。
しかしそれには理由がある。
「うーん、だってさ……愛宕を含めてなんだけどさ、艦娘のみんなって俺のこと……空気に思ってない? なんだかそれが寂しくてさ……だから間宮みたいにドストレートな愛嬌を見せられちゃうと……ついついデレちゃうんだよなあ」
しょげる俺。
自分の気持ちを口にした途端、どうしようもなく寂しい気持ちになった。
「かわいいんですね、提督って」
愛宕はうなだれている俺の頭を優しく撫でた。
気持ちが落ちた俺に優しくしてくれる愛宕。
勘違いとはいえ、俺のことで嫉妬してしまう愛宕。
俺は胸がどうしようも熱くなり、とんでもなく切なくなった。
不意に愛宕を見ると、愛宕は温かい笑顔を返してくれた。
「うふ、どうしました?」
ダメだ、これはダメだ。
かわいい、これはかわいすぎる。
俺はあまりにも切なくて、たまらず愛宕に抱きつこうとする。
「愛宕ぉ!」
“むにゅうう”
俺は勢いあまって愛宕の胸に飛び込んでしまい、俺の顔は愛宕のけしからんサイズなお胸に埋まってしまう。
「んもぅ、意外と甘えん坊なのですね」
愛宕は胸に挟まっている俺の頭を抱きしめ、ふくよかすぎるお胸で俺の頭を深く包み込む。
心地よい温もりと気持ちのよい柔らかさが、俺の頬にほんわりと、ふにゅふにゅと、ほっこり伝わってくる。
あまりの心地よさに、このまま寝てしまえたら、ひと晩中天国体験が楽しめるだろうなと考えてしまった。
それでもって朝になったら「んもぅ、提督ったら甘えん坊なのですね」と言って起こしてもらって――
「たまんねぇなぁ!」
たまらなくなった俺は叫び上げながら顔を上げた。
“むんにゅうううううッ”
「ひゃうんッ」
愛宕が甘い悲鳴を上げた。
俺は無意識のうちに愛宕のたっぷりすぎるお胸を掴んでいた。
俺の両の手が愛宕のお胸に埋まっている。
「わ、わ! わぁッ! ご、ごめんッ!」
俺は慌ててお胸を掴んでいる手を離そうとする。
「いいのですよ? 提督」
愛宕は俺の手の上に自分の手を乗せて、お胸に俺の手を押し込んだ。
「え、え? えぇッ! えええええ!?」
愛宕は頬を赤くしながら、やわらかな笑顔を俺に向ける。
「私のお胸、気になりますよね。提督、いつも見てますものね、私のお胸」
「あ、やっぱりバレてました?」
俺はテヘペロしてしまう。
男のテヘペロなんぞ見せられたもんじゃないほどに汚いものだとは重々承知しているが、それでもテヘペロしてしまう。
「提督にだったら、いいんですよ? 提督は私のお胸、触ってもいいんですよ?」
……マジですか?
そんなことを言われてしまったら、俺の理性はズドーンとどっかに飛んで行ってしまいますが。
俺は愛宕のお胸を揉み上げながら、優しい笑顔を向けている愛宕の唇を奪ってしまう。
「んぅッ、んちゅぅぅんッ」
唇を重ねられた愛宕は目を潤ませて、ほんわりととろけた顔を俺に向ける。
戸惑いつつも俺に身をまかせている愛宕がどうしようもなくかわいくて、俺は舌を愛宕の中に入れ込んでしまう。
舌の侵入を許してしまった愛宕は、ぴくんと身体を小さく揺らす。
緊張しているのか、少しだけ震えている愛宕の舌を、俺は舌先で優しく撫でる。
まるで怯えている子猫を撫でてやるかのように、俺は温かな気持ちを込めながら愛宕の舌を撫でてやる。
「んぅうッ、んううぅぅうんッ」
舌を舐められて気持ちが高まったのか、愛宕は自らの舌をうごめかして俺の舌に絡める。
俺と愛宕は互いに舌を求め合い、舌を絡ませ合い、口を吸い上げる。
深く長いキスに酔いしれるふたりは口の端からヨダレを漏らし、口の周りを濡らしていく。
そしてふたりはどちらからともなく、ゆっくりと唇を離した。
「提督、お願いがあるのですが……」
「お願い? 俺に?」
恥ずかしそうに身をよじりながら、愛宕は意を決したように俺を見つめる。
「甘えるのは、私だけにしてくださいね」
ドドクッとひと際大きく俺の心臓が高鳴った。
かわいい、どうしようもなくかわいい。
愛宕の乙女すぎる一面を見せつけられ、俺は切ない気持ちを爆発させてしまう。
はっきり言って我慢の限界だ。
「俺……愛宕に甘えたい」
俺は愛宕の首に巻かれた白いスカーフをほどき、シュルッと抜きとる。
愛宕は俺をまっすぐに見つめ、とろけた目を俺に向けている。
「俺、たくさんたくさん甘えたいよ。愛宕に甘えたい。愛宕に死ぬほど甘えたい」
たまらない気持ちの俺は愛宕に深い口づけをする。
愛宕の口を舌で愛撫しながら、愛宕の上着をゆっくりと脱がしていく。
上着の胸下のボタンを外そうとすると、手が愛宕の乳下に触れてしまう。
すると愛宕は唇を重ねたまま、ぴくんと身体を揺すって反応してしまう。
「んちゅッ、んちゅぅぅッ」
金属の塊のような装備品を丁寧に外し、床に置く。
真っ白いシャツ姿になった愛宕。
俺はシャツのボタンに手を掛ける。
愛宕が着ている白シャツ……そもそも愛宕の大きなお胸を支えられるようなシャツなどこの世に存在するわけもなく、いま愛宕が着ているシャツは無理やりに胸のボタンを止めている状態であった。
そのせいか、ボタンを外そうとするとボタンが愛宕のお胸に埋まってしまい、うまく外すことができない。
それでも果敢に俺はボタンを外そうとする。
すると愛宕はぴくぴくんとお胸を揺らし、身をよじらせる。
まったくもってボタンを外せないでいる俺はあせる気持ちを抑えながら、丁寧に、ゆっくりと、確実にシャツのボタンを外していく。
「ん? あ、あれ?」
シャツのボタンを幾つか外してみて、俺ははじめて知った。
愛宕はノーブラである。
これだけの立派すぎるお胸を持ちながら、ブラをつけないでいるなんて……いや、むしろ愛宕の立派すぎるお胸を支えてくれるような気概のあるブラなんて、この世には存在しないのではないだろうか。
それにしてもここまでお胸が大きいと、普通なら型崩れしてしまいそうだが、愛宕のお胸は素晴らしく美しい形を保っている。
俺は愛宕のお胸を感心しながら見つめて、着実にボタンを外していく。
あまりにも愛宕のお胸に夢中になっている俺は、愛宕の胸から数ミリと離れていない距離から愛宕のお胸を凝視し続けている。
“しゅるるるぅ、ばぁいィィィィィんッ”
シャツのボタンを外した瞬間、無理やり収納させられていた愛宕のお胸がバイィィンと飛び出してきた。
「ぱんぱかぱーんっ!」
突然流れた愛宕の自前ファンファーレ。
愛宕はおめでたいとばかりに両腕を上げて、渾身のバンザイをする。
バンザイの勢いで胸が突き出され、俺はもろにおっぱいアタックを喰らってしまう。
“もふぅぉッ! ぼぅおおおぉぉぉおおおん! …………ぱふッ”
「うぉおッ! ぅわああぁぁぁああッ! …………ぬひッ」
俺の顔はすっぽりと、完全に愛宕のお胸に挟まれてしまった。
愛宕の生おっぱいに包まれている俺。
心地よい温もり、低反発とも高反発とも言えない気持ち良すぎるやわらかさ、すべすべでいてもっちりとしている肌触り、たっぷりすぎる超々級のボリューム。
愛宕のお胸は大きいだけではなく、形も見た目も触り心地も、全ての点において満点以上の、もはや奇跡といえるほどに素敵で素晴らしい極上おっぱいであった。
そんな素敵おっぱいに挟まれている俺は、全身がどろどろに溶けてしまいそうなくらいに心地の良い天国を味わっていた。
「提督、私のおっぱい、好きですか?」
「好きです! 大好きです! 大好物です!」
「うふふ、それじゃあ私のことは好きですか?」
「好きです! 大好きです! 大好物です!」
「んもう、調子のいい提督ですね。でも嬉しいです、私のこと好きになってくれて。私も提督のこと、大好きですから」
愛宕はお胸に埋まっている俺の頭を優しく撫で撫でした。
「提督、私のおっぱいで甘えたいですか?」
「甘えたいです! 超甘えたいです! 甘えさせてください、愛宕様ぁ!」
俺は神を見るような目で愛宕を見つめる。
いや、実際に神なのだ。
高雄型重巡二番乳神・愛宕様!
「んもぅ、本当に甘えん坊なのですね。じゃあ特別に“愛宕スペシャルおっぱい雷撃”してあげちゃいますね」
「え? なになに? スペシャルおっぱい? 雷撃? なにその素敵すぎる技の名前……って、うわぁあッ!」
愛宕は俺の顔に横からおっぱいを押しつけて、押したり、離したり、押したり、離したり……それを繰り返す。
「こ、これはぁッ! あ、あの伝説の……ぱふぱふってやつかぁッ!」
愛宕は俺にぱふぱふをしている。
極上おっぱいでのぱふぱふは、極上の心地よさで俺を包み込んでくれる。
俺が自分でぱふぱふしているのはなく、愛宕が積極的にぱふぱふしてくれている。
これはたまらない。
もうたまらない。
たまらないったらたまらない。
これほどまでに“甘える”という言葉がびったしはまる行為は、他には無いだろう。
愛宕の極上おっぱいでぱふぱふされていると、興奮する気持ち以上に、安らぎや安心な気持ちで心がいっぱいになってしまう。
安らぎ、癒し、安心、それらは俺の精神年齢を著しく下げていく。
まるで赤子になったような、変な気持ちにさせられてしまう。
何にもできない赤ちゃんな俺を、全て受け止めてくれる愛宕。
なんだか本当に、俺は赤ん坊になってしまったのではないか……そんな錯覚に俺は襲われる。
「あ、あぶぅ……」
言ってしまって俺はハッとした。
わざとではい。
本当に素で言ってしまった。
自然に赤ちゃん言葉が出てしまった。
それを聞いた愛宕は目をとろけさせて、胸に挟んでいる俺の顔を抱きしめた。
「んもぅ、本当の本当に甘えん坊なのですね。提督ったら本当にかわいいです」
母性全開な温かな顔で、俺を見つめる愛宕。
俺の脳は極上ぱふぱふによって完全に溶かされてしまい、もはやまともにものを考えられない。
愛宕は俺の頭を膝の上に乗せ、膝枕をする。
すごい光景だ。
目の前には愛宕の極上おっぱいの下乳しか見えない。
いや、ほんの少しだけだが、おっぱいとおっぱいの狭すぎる隙間から、愛宕のやわらかな笑顔が見えている。
「赤ちゃん提督に、愛宕がおっぱいをあげまちゅねッ」
(遂行中)
目次はコチラ
詳細はHP「艦これ、こちら鎮守府第一基地前駐在所」にて
【艦これ】艦隊ウラこれくしょん 高雄型重巡姉妹編
序章:任務【春海提督、はじめての着任! 艦隊の指揮に入られよ!】
国内屈指の海軍兵学校。
この学校でトップに入ることは、国内トップであるのと同意である。
そしてこの学校には、特に抜きんでた才能を持った4人の若者がいた。
しかしこの4人、あまりにも特出した存在であった為に、正規のエリート出世コースからは外れた道を歩むことになる。
同時期、軍では秘密裏に極秘中の極秘プロジェクトが始動していた。
4人の若き軍人は知らなかった。
この極秘プロジェクトの中心人物として、軍が4人に目をつけていたことを。
ときは過ぎ、海軍兵学校を卒業する日が訪れた。
この日をさかいに、4人は数奇なる運命への道を歩むことになる。
――――――
――――
――
提督――それは艦隊の司令官である。
艦隊――それは複数の軍艦で編成された海軍の部隊である。
数ヶ月前のことである。
海軍兵学校を卒業したばかりの俺は、提督というありえないポストに就けられた。
異例の若さで提督に抜擢された俺は、この異常すぎる状況に不安を感じていた。
いや、不安なんて生易しいものではない。
むしろ恐怖を感じる。
提督なんていうとんでもないポストに就くということは、艦隊を指揮する司令官、つまりは艦隊のトップに立つということである。
そうなると俺は部下を持つことになるのだが、俺の部下となる人間は当然のごとく俺なんかよりも超先輩で超優秀な超軍人だろう。
俺からすれば雲の上の上の上の神様仏様みたいな方々を、こともあろうに部下として扱うなんて……ああ、考えただけで胃が痛い。
どんだけムチャぶりだよ……あまりにもムチャすぎて、肛門からブリッと胃が出てきそうだよ……
と、思っていた。
だが、現実はまるで違っていた。
まさか全く違う意味で胃が痛くなるような事態が待ち受けていようとは……
俺の名前は春海 碧龍(はるみ あおたつ)。
……なんともはや、いかにもな氏名である。
実はこの氏名は本名ではなく、育ての親がつけてくれた名前なのである。
この育ての親というのがかなりの縁起マニアで、俺にありがたい名前をつけようと必死に考え、考えに考え抜き、考えすぎてしまった結果、この名前になってしまった。
ちなみに俺はもともとみなしごで、実の両親は行方知れずである。
そして俺には血の繋がっていない、同い年の3人の兄弟がいる。
他の3人も俺と同じような境遇で、この育ての親に引き取られた子供達であった。
幸か不幸か……不幸にも、この3人の兄弟達も俺に負けず劣らずのキラキラネームがつけられている。
そんなキラキラした名前の4人は、同じ海軍兵学校に入学した。
そして自慢ではないが……自慢だが、俺達4人はかなり優秀な成績で卒業したのである。
卒業したその日、俺達4人は軍より極秘の命を受けた。
それこそが提督に任免するという辞令なのであった。
着任初日。
司令官の軍衣を着込んだ俺は、まるで孫がいたずらでおじいちゃんの軍衣を着ちゃったみたいな、完全に服に負けてしまっているお子ちゃま状態。
はっきりいって似合わない。
それでも俺は仰々しい軍衣を着込んで、遠路はるばる、とある港へとやってきた。
そこは秘密裏に作られた、超重要秘密を扱っている港であるらしい。
そのため、この港に関する情報はまるで聞かされていないし、そもそもこんな港が存在していること自体、俺は知らなかった。
「鎮守府って……ここでいいんだよな?」
一応、貰った地図どおりに来たつもりだ。
とはいえ、地図には駅から徒歩3時間としか書かれていないし、駅からまっすぐ線が描かれていて、その終点にココって丸印がつけられているだけだ。
もはや地図とは言えない代物だ。
というか、徒歩3時間とは何事か……そんなに遠いのなら、徒歩以外の移動手段を用意してもらいたかった。
「似合わない軍衣を着ながら、たっぷりボリューミーな荷物を持ちながら、3時間という長旅をこなすというのは……はっはっはっ、なんだ? 嫌がらせか?」
俺は盛大なひとりごとを言いながら、一枚の写真を取り出す。
この写真は極秘である鎮守府に関する、唯一の資料だ。
写真には茶色のブレザーに身を包む少女が映っている。
かなりかわいい、間違いなく美少女だ。
しかし俺が注目しているのはカワイイ少女ではなく、少女が身につけているモノだ。
少女はひどく物々しい金属の塊のような武器、むしろ兵器というべきだろうか、とにかく少女は物騒すぎるモノを着装していたのである。
そんなカワイイのか物騒なのか、なんだかよくわからない少女が、少し前屈みになって、こちらにピースしてウィンクしているのである。
そして胸のあたりに矢印が引っ張ってあって、“ココに注目!!”と書かれていた。
「そんなご丁寧に注目だなんて書かなくても、見ますがな。見ちゃうがな。だって俺、男の子だもん!」
俺は写真を見つめながら、派手にひとりごとを話す。
この写真の少女は、どう見てもわざと胸の谷間を見せつけている。
「なんていい娘なんだ!」
胸の谷間なんて、絶対に見ちゃうがな。
注目の的でんがな。
ガン見しまくって、写真に大穴あけたりますわ!
「ッて、そもそもなんなんだ、この写真。萌ミリタリーって奴なのか? こんな写真を渡されても、何が何だか……いや、嫌いじゃないけども、こういうの。むしろ好きです。大好物だお! 正直この写真、もっと欲しいお!」
俺は写真の女の子を、特に胸をガン見しつつ、これからどしようか途方に暮れている。
鎮守府に辿り着いたのはいいが、出迎えらしいものもなく、誰かに聞こうにも周囲には誰もいない。
とりあえずそれらしい建物の、それらしい入口を見つけたので、扉をノックしてみる。
「すいませーん、今日からお世話になる提督ですけどー」
返事が無い。
お留守かな? ……そんなわけない。
俺は溜息をつきながらそっと扉を開く。
鍵がかかっていない、極秘裏なくせにずいぶんと不用心だ。
「……おじゃましまーす」
おそるおそる中へと入ると、突然背後から声をかけられた。
「提督ッ! おはようございますぅ!」
「んひゃあ!! え!? 提督?! そんなに偉い人がいるの!? どこどこ? どこにいるの? って、提督は俺かぁ!!」
すっかりパニックになっている俺を、目の前にいる少女が不思議そうに見つめている。
歳の頃は、どう見ても中学生……いや、小学生か? ……この少女も写真の少女と同様、金属の塊みたいな兵器を身につけている。
「提督? どうされましたかぁ? ぼんやりしてないで、司令官室にいきましょうよぉ!」
俺は少女に背中を押され、司令官室とやらに連れて行かれた。
「さッ、今日も一日がんばりましょうねッ! では、さっそくご命令を、提督ッ!」
なにがなんだかわからないままに、俺は司令官室に通され、司令官の椅子に座らされた。
そして少女は目をキラキラさせて、いまかいまかと俺の命令を待っている。
「えーと、あー、命令? いきなり命令とか言われてもなあ、逆に誰か俺に命令してくんないかなあ……あの、何していいのかわかんないんですけど」
俺は困り果てた顔をしながら髪を掻きむしる。
そして目の前にいる少女をまじまじと見つめる。
「?? なんだろう、不思議な格好をしているなあ。機械的というか、それなのに妙に女の子らしい服装をしているというか……っていうか女の子? なんで女の子? ここ、海軍だろ? そういう場所って女人禁制くらいな勢いがあってもおかしくないと思うんだけどなあ……ああ、わけがわからん……」
俺は少女を見つめながらぶつぶつと呟き、完全フリーズしてしまう。
「提督? どうしましたですか、提督? おーい、提督? あれ? 生きてるのかな?」
“がッつぅぅんッ”
少女は手に持っている金属の塊のような装備品を、提督である俺の頭におもいきり打ちつける。
俺の目の前で火花のような星が飛び散り、鼻の奥の方から血の匂いがした。
「いってぇぇぇッ! 何すんだよぉ! ちょっとだけ死を感じたぞ!」
「あ、提督、生きてたぁ」
少女は俺ににっこりと笑いかけ、ぴょこんと跳ね上がる。
「さッ、ご命令をッ! 提督ぅ!」
――――――
――――
――
あれから数ヵ月が経った――
いやー、びっくりだ。
人間って慣れるもんだなあ。
こんなびっくりどっきりとんでも状況下で、俺はすっかり提督してる。
艦娘達に命令を下し、敵と戦う毎日を送っている。
着任初日、俺は何が何だかわからないまま、目の前にいる少女に命令を出した。
とりあえずこの庁舎内を案内してほしいという命令を。
そして庁舎を案内してもらいながら、少女が何者であるのか、そもそも俺は何をすればいいのか、何と戦うのか、少女に聞いてみた。
正直、俺の質問に対して知りたいことの一割あるかないか程度の答えしか返ってこなかったが、それでも俺が何をすべきなのかはわかった気がする。
そして時が経つにつれて、少しづつではあるが、少女達の存在について、我々が倒さねばならない敵について、解ってきた。
とはいえ、いまだにわからないことだらけだ。
俺……こんなんでいいのかなあ……こんなちゃらんぽらんで無責任な提督、この世で俺だけだろうなあ……
そうそう、これは最近知ったことなのだが、俺が着任したここは第二鎮守府というらしい。
……なんだろう、ってことは第一鎮守府があるってことだよな?
……なんだろう、ここってもしかして、2軍扱いなのか?
……なんだろう、それってまるで特車2……ぐふんッ、げへんッ! ……なんでもありません。
はぁ、きっと第一鎮守府の提督さんは、さぞかしご立派なエリート軍人なんだろうなぁ……
会ったこともないのに、負けた気分だ……
さてはて、これからどうなっていくのだろうか。
先は全く見えず!
提督――それは艦娘の司令官である。
艦隊――それは複数の艦娘で編成された謎の部隊である。
艦娘――それは俺の大事な嫁……もとい、部下達である!
(任務達成)
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